連休前の慌ただしい火曜日。本棚の整理をしていたら、付箋だらけの『イシューからはじめよ』が出てきた。前職のコンサル時代に擦り切れるほど読んだ本だ。

久しぶりにページをめくって、思わず手が止まった。当時赤線を引いた箇所と、いま線を引きたい箇所が、ほとんど重ならないのだ。

「解の質」より「イシューの質」

本書の中心メッセージはシンプルだ。生産性を上げたいなら、まず「いま本当に解くべき問いは何か」を見極めよ。解の質はその後についてくる。

10年前の私は、コンサルとして大企業のプロジェクトに張り付いていた。線を引いた箇所は、ほとんどが「分析手法」や「資料の作り方」だった。要はHow(解の質)に夢中だった。

いま、自分で会社を経営するようになって、刺さる箇所が変わった。

  • 「やる必要のない仕事を、いかにやらないか」
  • 「複数のイシューを同時に追わない」
  • 「会議の冒頭で、今日決めるべきイシューを一行で書き出す」

このあたりに、新しく付箋が増えた。

中小企業ほど「やらないこと」を決められない

大企業には人もお金もある。だから「全方位で攻める」ことが許される。一方で、私たちのような中小企業はそれが許されない。社長と数十人の社員で動かす船だ。同時に追える問いは、せいぜい2〜3個。それ以上やると、全部が中途半端になる。

頭ではわかっていた。でも実際は、目の前に降ってきた相談、急な引き合い、社員からの提案、すべてに反応してしまう。気づくと、今期のテーマが20個くらいに膨らんでいる。

最近、経営会議の冒頭でこんなフォーマットを試している。

項目 内容
今日のイシュー 一行で
なぜ今これか 一行で
決める/決めない どちらかを宣言

たったこれだけ。でも、議題に「決めない」と書く瞬間、メンバーの背筋が伸びる。会議が「進捗共有」から「意思決定の場」に変わる感覚があった。

経営者が読み返すべき本は、年齢で変わる

10年前にこの本から得たのは「賢く分析する技術」だった。いま得ているのは「賢く諦める覚悟」だ。

同じ本でも、立場が変わると線を引く場所が変わる。これは本のすごさでもあるし、自分の変化を測るリトマス試験紙でもある。

連休中、もう一冊、本棚から引っ張り出してみる予定だ。次は『ザ・ゴール』にしようか、『失敗の本質』にしようか、迷っている。

みなさんは、最近どんな本を読み返しただろうか。よければ教えてほしい。