最近、知り合いの経営者から「いい人がぜんぜん来ない」と相談を受けた。求人媒体を増やし、採用代理店も入れた。それでも応募は集まらず、来た人も内定を出すと辞退される。

私もまったく同じところにいた時期がある。今日はそこからどう抜け出したか、私たちの実体験として書き残しておきたい。

「全員に好かれる会社」を目指すと、誰にも刺さらない

2年前まで、私たちの採用ページはこんな感じだった。

  • 「アットホームな職場です」
  • 「成長環境があります」
  • 「裁量を持って働けます」
  • 「ワークライフバランスを大切にしています」

ぜんぶ嘘ではない。でも、ぜんぶどこの会社でも書いてある。

試しに自社の採用ページを他社のページに混ぜて並べ替え、社内のメンバーに「うちはどれ?」と聞いてみたことがある。半分くらいしか正解しなかった。これは衝撃だった。

「来てほしい人」を絞らず、「誰にでも来てほしい」と書くと、結果的に誰の心も動かない。当たり前といえば当たり前なのだが、自分たちの言葉を客観的に並べてみるまで、私はそれに気づかなかった。

「合わない人を遠ざける」ことから書き直した

採用ピッチを書き直すとき、私たちは発想を逆にした。「うちに合う人」を引き寄せるより、「うちに合わない人」を入る前に遠ざけよう、と。

書き換えの一例はこんな感じだ。

以前 書き直したあと
成長環境があります 自分で課題を見つけて動ける人でないと、辛い職場です
風通しがいい 役職を超えて議論します。社長にも遠慮なく反対意見をください
裁量があります 裁量と引き換えに、結果への責任もセットです

率直すぎて、社内でも「ここまで書いていいのか」と議論があった。でも結果は明快だった。応募数は3分の1に減り、内定承諾率は2倍になった。そして何より、入社後の早期退職がほぼゼロになった。

採用は「母集団を増やす」ゲームではなく、「ミスマッチを減らす」ゲームに変わった。

一人を本気で口説くほうが、遠回りに見えて近道

中小企業に潤沢な採用予算はない。だから「全方位に発信して、誰かを引き寄せる」戦略は、そもそも私たちのリソースに合っていなかった。一人ひとりに「合うか・合わないか」をはっきり伝えるほうが、結果として早い。

「いい人が来ない」と感じている経営者の方に、一度だけ問いたい。

御社の採用ページは、御社で働くと「辛いこと」を、ちゃんと書けているだろうか?

次回は、この尖った採用ピッチを社員と一緒に作り直したプロセス——「うちに合わない人」の解像度をどう上げたか——を書こうと思う。